Amazon.co.jp ウィジェット TAT オフ会潜入日記 忍者ブログ

ピピピ…、ピピピ…、

 「こちらこんどー、聞こえるか?」




 「指示通りオフ会が開かれるDr.K家への潜入に成功した。指示をくれ、大佐。」
 『よし、今回の任務は至って簡単だ。今日オフ会に来ると言われているコードネーム[やゆよ]氏を
  その家に一泊させてくれ』
 「なんだその任務は?どういう意味だ。」
 『すまない。私も上層部の意図は知らされていない。』
 「…そうか。分かった。
  で、その[やゆよ]氏はいつここへ来るんだ?」
 『彼は今鉄道にて移動中。このペースであれば到着は14時近くになるだろう。』
 「なるほど、もう少しだな。了解、任務を続行する」


2012/05/04 13:00 私、こんどーは特務機関からの指示を受け、
オフ会会場への潜入に成功した。
今回私に課せられた任務は「[やゆよ]氏をDr.K家に一泊させること」だ。
まったく意図がわからない任務だが、信頼する大佐からの指示だ。全力を尽くそう。
それにしても[やゆよ]とはなかなかに発音しづらい名前だ。舌をかみそうになる。

現在オフ会会場はスマッシュブラザーズで盛り上がっている。
一緒に盛り上がれないのがもどかしいところだ。
こげという腹の出た男が得意げにステージを紹介しているが、他のプレイヤの顔は不満げだ。
確かに一見したところ、ステージ構成がゲームの良さを根本的に破壊している。
何でもこげ氏が作成したステージらしいが、彼はセンスがないな。

13:30 [やゆよ]氏がDr.K家に到着。予定よりやや早いが、問題ない。


ピピピ…、ピピピ…、

 「こちらこんどー、聞こえるか?」
 『どうした。』
 「大佐、[やゆよ]氏が現れた。指示をくれ。」
 『よし、ひとまずはそのまま潜伏を続けるんだ。[やゆよ]氏の行動は先が読めない。
  まずは観察をすることで、データ収集に徹しろ』
 「わかった。このまま潜伏を続ける」


ここで私がどこにいるか、解説しておこう。
正確に言うと、私はDr.K家の中にはいない。そういう意味では潜入していない。
いま私はDr.K家と隣家のわずかな隙間に潜伏している。
薄汚れた白を基調とした潜入服を身にまとっているため、迷彩効果は抜群だ。
事前に得た大佐からの情報より、Dr.K家でのオフ会では
人数過密により換気が追いつかず熱がこもりがちになるため、
窓は基本的にあけっぱなしであることを認知している。声は全てまる聞こえ。情報は筒抜けだ。
また、オフ会会場は非常に雑然としており私が監視用の小型カメラを窓辺に置くことも容易かった。
こんなにガードが甘い潜入先は初めてだ。


彼らはレジスタンスなるゲームを始めた。
どうやら体制の転覆をはかるレジスタンス組織の中に体制側のスパイが紛れ込み、
レジスタンス組織の疑心暗鬼を図ることで内部から組織を破壊しようとしているらしい。
このゲームではレジスタンス組織が体制を転覆させるべく合計5回のミッションをこなす中で
スパイがこのミッションをひそかに妨害し、体制を維持できるか否かを目的としているようだ。
当然レジスタンスにとってはスパイを暴きだし、任務を成功させることが目的となる。

しかし待ってほしい、合計5回のミッションのうち、3回失敗させればスパイの勝ち。
逆に3回成功させればレジスタンスの勝ちと言うではないか。
なんというぬるいルールだろう。冷戦下をソヴィエトで生き抜いた私にとっては
1回のミッション失敗は即ち死を意味する
これはレジスタンスサイドにとっても、スパイサイドにとっても同じことだ。
2回までは失敗してもかまわないとは、なんというヌルゲーであろうか。真剣味に欠ける。
レジスタンスにとっては1度の失敗はすなわち体制側からの粛清を意味する。
ゲームとはいえ、もう少し真面目にやっていただきたいところだ。

そうこうしているうちに彼らが食事に出かける時刻となった。
どうやら行きつけのもんじゃ屋に行くらしい。


ピピピ…、ピピピ…、

 「こちらこんどー、聞こえるか?」
 『こんどー、聞こえているぞ。』
 「大佐、彼らはもんじゃ屋に食事に出かけるようだ。指示をくれ。」
 『想定通りだ。彼らはオフ会のたびにそのもんじゃ屋に出かけているからな。
 こんどー、君の荷物の中にもんじゃ屋の店員服がある。確認してくれ。』
 「…、確かにある。大佐、これを着ろということか?」
 『本日、もんじゃ屋に出勤すべき店員1名をこちらで確保している。欠勤になるはずだ。
 こんどー、君は彼に扮してもんじゃ屋に潜入してくれ。』
 「なるほど。この顔写真がその店員だな。体系も私によく似ている。
 分かった。フェイスペイントにて扮装し、もんじゃ屋に潜伏する」


もんじゃ屋への潜入は非常に容易だった。ちょうど今彼らを卓に案内したところだ。
私のミッションは[やゆよ]氏をDr.K家に一泊させること。
私が失敗すれば[やゆよ]氏は本日の終電で帰宅することになる。
ミッションを成功させるためには、
強制的に[やゆよ]氏を「Dr.K家に宿泊せざるを得ない状況」に追い込むしかない。
そのために大佐は私の荷物に睡眠剤を準備してくれていた。
成程、これを[やゆよ]氏の飲料の中に投与し、彼を昏睡状態に追い込むことで
彼をDr.K家に足止めさせろということだな。

最初の注文が入った。ソフトドリンク数杯と、ビールを多数だ。
事前情報によれば[やゆよ]氏はかなりのビール党であるらしい。ではこのビールに睡眠剤を…。

「お待たせしました!ビールです!」

ビールをテーブルに置いていく。完璧だ。
あとはこの睡眠剤をいれたジョッキを[やゆよ]氏の前に置けば…
…あれ?睡眠剤をいれたジョッキはどれだ?
た、確か該当のジョッキにはマーキングをほどこし…
ああっ、マーキングがジョッキの水滴によって消えてしまっている!
思い出せ…、位置関係的に確かこの一番手前のジョッキが睡眠剤入りだったはず!

ジョッキが混在してしまうというアクシデントはあったものの、
私、こんどーが店員に扮しているという事実はばれずに彼らに接触できた。
飲んでないうちから酔っ払ってるんじゃないか。

その後も続々と入る注文。
食料は当然のこと、飲料の注文も多数入る。
その中でもビールの注文の多さが目につく。
[やゆよ]氏とDr.K氏はかなりの量を飲むと聞いていたが、なるほど、事前情報通りだ。
しかしそろそろ睡眠剤の効果が現れる頃なのだが…。

「お待たせしました!ご注文のビールで…ああっ!?」

ビールを宴会場へ持っていって分かった。こげ氏が寝ている!!!
私が投与した睡眠剤入りビールは[やゆよ]氏の手ではなく、こげ氏のもとへ渡ってしまったらしい。
なんということだ!私としたことがこんなミスを…。

「そばめしはー?」

いちいち鼻につく野郎だ。そうやって飲んで食って寝るからそんな腹になる。

くそっ…、他に手は…他に手は無いのか?


ピピピ…、ピピピ…、

 「こちらこんどー、聞こえるか?」
 『こんどー、どうした。作戦は順調か』
 「大佐、すまない。睡眠剤入りビールの提供に失敗した。
 誤って睡眠剤入りビールはこげ氏のもとに渡ってしまったようだ」
 『なんだと!…こんどー、君らしくないミスだな。
 もう時間がない…、彼の終電は手元のデータによれば22時30分だ。
 こうなったら[やゆよ]氏をビール責めにして昏睡させるしかない。健闘を祈る』
 「分かった。全力を尽くす。」


しかし現実は甘くなかった。
彼の日本人離れした強靭な肝臓によりアルコールは分解され、
彼はピンピンした顔でもんじゃ屋を後にし、果てには写真撮影をこなして見せた。
ミッション失敗だ…。
先述したとおり、我々にとって一度のミッション失敗は死を意味する。
[やゆよ]氏を泊らせることに大きな意図があるのであれば、なおさらだ。
私はその報いを受けねばならない。


ピピピ…、ピピピ…、

 「こちらこんどー、聞こえるか?」
 『こんどー、…何も言わなくていい。』
 「大佐、任務失敗だ。彼は今、電車に乗り込んでいってしまった」
 『…そうか。君ならばうまくいくだろうと、任せたのだが…、残念だ。』
 「どんな罰でも受ける。だが、最後に教えてくれ。この任務の意図はなんだったんだ?」
 『説明しただろう。私も詳しくは知らんのだ。ただ、指令はSTから寄せられている。』
 「ST?なんだそれは。」
 『Sweet Tea氏のことだと思われる。』
 「Sweet Tea…、甘いお茶か。彼はなぜ、[やゆよ]氏を泊らせたかったのだろう…」


今回の任務は失敗した。
幸い、私は特務機関からの大きな罰も受けず、こうして元気でいる。
レジスタンスというゲームをバカにしていたが、この平和な日本では2度のミッション失敗でも
なんのペナルティも負わないというルールは現状に即しているのかもしれないな。
前言を撤回しよう。

多くの謎を残したまま、オフ会は終了した。
だが忘れないでほしい。私は同じミスは二度犯さない。
次回のミッションでは必ず、[やゆよ]氏をDr.K家に泊らせてみせる。

to be continued...?

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